最終更新日:2025年4月10日
 『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー(DQMJ)』は現在、中古市場などで「異常に安い」と言われるほどの低価格で取引されています。これは今に始まったことではなく、筆者は10年近く前の小学生時代に本作を購入しましたが、購入価格はBOOKOFFのゲームソフト最安値となる108円(税込)でした。ここまで安い理由は一体何なのでしょう?その理由は、単に古いソフトだからという単純なものではありません。そこには販売当時の状況から、ゲームの設計、流通状況、そして現在のゲーム市場の変化に至るまで、複数の要因が絡み合っているのです。本記事では、その背景を順を追って詳しく解説していきます。
▲ 2025年現在のDQMJ中古価格
まず最も大きな理由として挙げられるのが、「販売本数の多さ」です。DQMJは2006年12月にニンテンドーDS用ソフトとして発売され、初週で約59万本、最終的には日本国内で約125万本を売り上げるという非常に高い販売実績を記録しました。当時のDS市場は空前のブームであり、 あらゆるジャンルのソフトが売れていた中、ドラクエブランドの影響力もあって非常に多くのユーザーの手に渡りました。 このように膨大な本数が出回ったことで、現在でも中古市場には在庫が豊富にあります。供給が豊富であればあるほど、需要と供給のバランスは崩れ、価格は自然と下落します。DQMJはまさにその典型で、「欲しい人の数よりも、出回っている本数の方が多い」ため、極端なまでに安くなっているのです。
次に注目すべきなのは、ハードの世代交代に伴うプレイ環境の変化です。DQMJはニンテンドーDS専用タイトルであり、現在の主流であるNintendo Switchシリーズではプレイできません。つまり、新しくゲームを始めたいという人がいても、DSや3DSといった対応機種を持っていなければプレイすることができないという制限があります。 また、3DSはまだ比較的新しい部類の旧ハードですが、DSはすでに生産終了から年数が経っており、本体そのものの入手性も下がっています。そのため、DQMJを遊ぶための環境を整えるハードルが高くなっており、プレイしたい人の数が限られてしまうのです。こうした「実際に遊べる人の少なさ」も、需要の減少を招き、価格が落ちてしまう原因になっています。
DQMJの魅力の一つとして、Wi-Fi通信による対戦やランキングなどのオンライン要素が挙げられます。当時のDSソフトの中でも、インターネットを使った通信対戦やデータ交換が可能なタイトルは画期的で、多くのユーザーがその機能を楽しんでいました。 しかし、2014年にニンテンドーWi-Fiコネクションのサービスが終了し、それ以降はDQMJのネットワーク機能は完全に使えなくなりました。これにより、プレイヤー同士の対戦や配信モンスターの受け取りといった要素が失われ、ゲームとしての魅力やボリュームが実質的に削られる形となりました。このように、かつての楽しみ方ができなくなってしまったことで、ゲームの評価や価値が相対的に下がり、価格にも影響しているのです。 筆者が本作を購入したのは2015年であり、ネットサービス終了の影響をモロに受け、大幅な価格安後に購入していることがわかります。
DQMJは、その後シリーズとして「ジョーカー2」「ジョーカー3」と続いており、システム面やモンスターの数、育成バランスなども進化しています。また、3DS時代には初代「テリーのワンダーランド」や「イルとルカの冒険」が3Dリメイクされ、ビジュアルや快適性が大幅に向上した形で再登場しました。 これにより、同じ「ドラクエモンスターズ」シリーズを遊ぶなら、あえて初代ジョーカーを選ぶ理由が薄れてしまいます。特に後発のリメイク作品やジョーカーシリーズの続編は、今でも一定の評価と人気があり、中古価格も比較的高値で安定しています。そうした中で、初代DQMJは「古くて、不便で、遊びにくい」といった印象を持たれやすくなり、相対的に市場価値が下がっているというわけです。ネット上では「無印ジョーカーは足が遅すぎる」という声が上がったりもしてますね(笑)このようなシステムの古さも価格悪化の原因となっています。
▲ 後続作品は中古価格もキープされています。
また、DQMJはレトロゲームとしての「プレミア価値」も付きにくいジャンルです。ファミコンやスーパーファミコン時代のタイトルは、もはや当時のソフトそのものが希少性を持ち始めており、コレクション対象として高値で取引されることもあります。しかし、DQMJは販売数が多すぎるため希少価値がなく、しかもDSソフトという「中途半端な古さ」のため、コレクターにとっても注目されにくい存在です。 一部のマニアを除けば、「今さらDSの初期作品を買ってまで集めたい」と思うユーザーは少なく、保存状態にこだわらなければワンコインで手に入るほど安価になってしまっているのが現実です。
▲ たとえば供給量が少ない割に需要が多いDQ3.SFC版は30年前の作品であっても非常に高値で取引されている。
以上のように、DQMJが異常に安い理由は、単なる中古の値下がりといった表面的な理由だけではなく、販売本数の多さ、対応ハードの旧式化、オンラインサービスの終了、後継作やリメイクの存在、そしてレトロゲームとしての希少性の低さといった、複数の要因が複雑に絡み合った結果です。こうした事情を理解すれば、なぜこの名作が「100円〜500円」ほどで中古店に並んでいるのか、その裏側が見えてくるでしょう。しかしまた時を重ねてDSソフトというもの自体が希少性のある古さになった時にはプレミア価値として上昇する可能性もありますね。 ただし、ゲーム自体の完成度や面白さは今でも評価されるべきものであり、低価格であってもその価値を再発見できるユーザーにとっては、非常にコストパフォーマンスの高い一作と言えます。筆者もやり込み要素も豊富なDQMJにハマったおかげで10年近くプレイしています(笑)価格に惑わされず、改めてその魅力に触れてみるのも一興です。