最終更新日:2025年4月10日

 

異常に足が遅いDQMJ主人公

DQMJのパッケージ写真など

『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー(DQMJ)』無印版において、プレイヤーの多くが最初に感じる違和感の一つに「主人公の足が異常に遅い」という点があります。後発のDQMJ2以降ではスピード感が増しているため、無印の足の遅さはとくに目立ちます。では、なぜDQMJ無印の主人公の移動速度はこれほどまでに遅いのでしょうか?その理由は主に以下の4つに集約されます。

1. 3Dフィールド初導入による試行錯誤

DQMJ無印は、シリーズ初のニンテンドーDS向け作品であり、かつ初のフル3Dフィールドを採用したタイトルでもあります。これまでの2D見下ろし型からの大きなジャンル転換により、開発側は「快適さよりも、まず安定性と処理負荷の軽減」を優先せざるを得なかったと考えられます。移動速度が速すぎると、処理落ち、カメラ酔い、当たり判定のバグなどが起きやすくなるため、あえて移動速度を抑えた可能性が高いです。

2. フィールドの狭さとのバランス調整

本作のフィールドは見た目に比べて狭く、一本道構造のマップが多く存在します。移動速度を上げると「マップが一瞬で終わってしまう」「探索の密度が薄く感じられる」といった問題が起きるため、足の遅さでボリューム感を演出している節もあります。実際、マップ自体の広がりを歩行速度で“水増し”しているような設計になっています。

DQMJのパッケージ写真など

▲本作は狭い道にモンスターが闊歩していて非常によけづらい

3. エンカウントバランスの設計

DQMJでは、敵モンスターがフィールド上にシンボルとして表示される「シンボルエンカウント方式」を採用しています。移動速度が速すぎると敵とぶつかる前にスルーできるケースが増え、エンカウントバランスが崩壊する恐れがあります。足を遅くすることで、ある程度敵との接触を避けにくくし、適正な戦闘回数を維持しているのです。

4. システム的な不備やチューニング不足

DQMJは、DQMシリーズ初のDS用完全新作として発売されたものの、後に「完全版」とも言える『DQMJ2』『DQMJ2プロフェッショナル』が短いスパンで発売されていることからもわかるように、無印は“未完成”に近い面があったともいえます。移動速度の遅さもその一つで、テスト段階で不満の声があっても十分に調整がなされないまま発売に至った可能性があります。

総括

DQMJ無印の主人公の足が遅い理由は、処理能力の限界、3Dマップ設計の未成熟、ゲームボリュームの演出、そして戦闘バランスの維持といった技術的・デザイン的な理由が重なった結果といえます。後続作では移動速度が向上し、プレイしやすくなっていることから無印版での足の遅さは「技術的限界と経験不足による副産物」だったと位置付けられるでしょう。とはいえ、あの「のそのそ歩く感じ」が無印独特の雰囲気を作り出していたのもまた事実であり、シリーズ初の3D化への挑戦としては一つの味とも言えるのかもしれません。